その七十九 世界デザイン博「ガウディの城」展示場は名古屋城天守閣!
#松坂屋ヒストリア小話 その七十九(2022/3/30配信)
’89世界デザイン博の松坂屋パビリオン「ガウディの城」展示場は名古屋城天守閣の中だった?!
世界デザイン博覧会シンボルマーク
名古屋市の市制100周年を記念し、「ひと・夢・デザイン-都市が奏でるシンフォニー」をテーマにした「世界デザイン博覧会」が1989年(平成元)7月15日から11月26日までの135日間、市内の名古屋城(中区)、白鳥(熱田区)、名古屋港(港区)の三会場で開催された。会期中は各会場で多彩な展示、催しが繰り広げられ、1,518万人の入場者数を記録した。
松坂屋名古屋店(1980年)
世界デザイン博開催にあたり、松坂屋は博覧会の特別公式ポスターの原画制作を、米国ロサンゼルス在住の人気アーティスト・山形博導氏に依頼し、完成後名古屋市にその原画を寄贈している。《ファンタジー》と名付けられたこの原画は、欧米諸国の街並みを題材にした、山形氏ならではの精緻でカラフルな作品であった。この原画をもとに制作された特別公式ポスターは、名古屋市内や東海地区の公共施設などに配布され、デザイン博PRに一役買った。
特別公式ポスター(出典:世界デザイン博覧会 公式ガイドブック)
そして、名古屋城会場に出展した松坂屋提供パビリオン「ガウディの城」は、スペイン・カタルーニア出身の天才建築家アントニ・ガウディ(1852~1926年)とカタルーニアの近代における生活文化を紹介する内容であった。展示会場は名古屋城天守閣の地下1階から地上5階、小天守閣地下1階及び天守閣前の広場をすべて使用するという、ガウディの展覧企画としてはかつてない大規模なもので、新東通信が企画運営を担った。
アントニ・ガウディ(1852~1926年)
ガウディの代表作 サグラダ・ファミリア教会
天守閣前の広場にはガウディの代表作であるサグラダ・ファミリア教会をイメージしたシンボルタワーを設置した。この新しいガウディをイメージした高さ22m~45mの間で伸び縮みする機械仕掛けのオブジェは、ガウディの世界への入口をにぎやかに演出するもので、名古屋のシンボルでもある名古屋城との対比は来場者の目を楽しませた。
「ガウディの城」シンボルタワーと展示会場の名古屋城天守閣
「ガウディの城」夜景
「ガウディの城」テレホンカード
天守閣内2階の展示場には、ガウディやピカソ、ミロら多くの芸術家たちがたむろしていた19世紀末のバルセロナの街のカフェ“四匹の猫”が再現され、3階・4階には初の展示公開となった木製の「カサ・バトリョ邸の3人掛けベンチ」など、ガウディが設計した家具類約20点の展示のほか、同時期にスペイン・カタルーニアで花開いた“モデルニスモ”という芸術運動に携わった画家らの作品も展示して、デザインのもつ豊かな創造性を訴えかけた。
天守閣2階に再現されたカフェ“四匹の猫”
天守閣3階に展示されたバトリョ邸の3人掛けベンチ(1906年ガウディ作)
天守閣5階展示“ガウディの空”
松坂屋提供「ガウディの城」チラシ(1989年)
松坂屋提供の「ガウディの城」には135日間の会期中に、目標を大きく上回る160万人が入場し、デザイン博に出展した31のパビリオンの中でも高い評価を受けて博覧会成功の原動力となった。なお、松坂屋は芸術運動モデルニスモの代表的建築家であったドメネク・モンタネール(1850~1923年)の作品で、当時バルセロナの観光局会議室に設置されていたカラフルなステンドグラスのレプリカ(複製)を現地で制作し、日本に空輸して名古屋城天守閣3階展示場で陳列・紹介した。この美しいレプリカは、博覧会終了後に松坂屋名古屋店に移設され、現在は南館7階「松坂屋史料室」前の通路に展示されて華やかな時代の息吹を伝えている。
ドメネク・モンタネールが制作したステンドグラス(バルセロナ)
南館7階「松坂屋史料室」前に展示されているステンドグラスのレプリカ
南館7階ステンドグラス・レプリカの一部