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2025.06.25

小袖に魅せられ気づけば博士号! 美術館担当の荘加さんと小袖の美しさと魅力に迫る!

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小袖に魅せられ気づけば博士号!  美術館担当の荘加さんと小袖の美しさと魅力に迫る!

みなさんは松坂屋の中に美術館があるのをご存知ですか? 

 

松坂屋美術館は、1991年3月21日に開館し、国内外の絵画、工芸、アニメーションなど幅広いジャンルの企画展を数多く開催し、松坂屋名古屋店でのお買い物とともにお気軽に楽しんでいただける美術館として、様々なジャンルの展覧会を定期的に開催しています。 

 

ショッピングのついでに気軽に立ち寄れるというのはすごく身近な存在の美術館ですよね! 

 

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南館7階松坂屋史料室で展覧の「夜着ー江戸時代の寝具ー」展にて 
こちらも「松坂屋コレクション」のひとつ 
※現在本展覧は終了いたしております。

 

こんにちは、金城学院大学の「あみ」です。 

 

今回ご紹介するのは、松坂屋名古屋店南館7階にある「松坂屋美術館」で美術館の企画担当をされている荘加直子さんです。 
 
「生活と文化を結ぶ松坂屋」という標語に憧れて松坂屋で働きたいと思っていたそうで、美術館の企画担当ができるようになった時はとても嬉しかったとのこと。 
そんな美術館愛にあふれる荘加さんに、多岐にわたる美術館のお仕事のお話や、荘加さんが愛してやまない「松坂屋コレクション」という小袖をはじめとする染織品群の魅力についてお話を伺いました。 

 

取材を通して、松坂屋の新たな歴史を知ることができました。その魅力をお伝えします! 

 

 

 

学芸員の資格を活かして

 

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—— 荘加さんのお仕事を教えて下さい。 

 

荘加さん:

松坂屋美術館で開催される展覧会の企画担当としての展覧会準備と、展覧会に付随する学芸員資格保持者の仕事を行っています。 

 

今は7月に開催する「再興110回院展記念展 同人たちの出世作と今」の準備をしています。そろそろ9月に開催予定の「松本市美術館所蔵 草間彌生 版画の世界 反復と増殖」の準備もはじめないといけませんし、来年は美術館が開館35周年なので「松坂屋コレクション」の展覧会の準備も少しずつ始めています。 

 

——学芸員資格保持者の仕事とはなんでしょうか。

 

荘加さん:

展覧会を企画したり、作品を借り保全する為に管理する(状態を常に確認する)、また、展覧会の連載を書いたりという広報活動をすることです。 

 

松坂屋美術館は博物館法の規定上の美術館ではないので、学芸員資格がなくても美術館担当になれるのですが、私の場合は自分の仕事の幅を広げたく、入社して4年目くらいに通信教育で資格取得をしました。さらに休日に大学院に通い専門分野を持ち、念願の「松坂屋コレクション」という着物の展覧会企画もできるようになりました。 

自らの意思で働きながら大学院に通い、資格を取ったという荘加さん。

美術館に対する想いが強い荘加さんだからこそ実現できる企画もあるのではないかと思いました。現在は、外部での研究も行なっているとのことで、荘加さんの研究内容をもっと深く知りたくなりました。 

 

 

 

松坂屋コレクションと小袖の魅力に迫る

 

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南館7階松坂屋史料室「夜着ー江戸時代の寝具ー」展で展覧されている江戸時代の「夜着」は、小袖を大型に仕立てて綿をいれたもので、掛け布団として使われていたものだそうです。写真に写っているこちらの着物も「松坂屋コレクション」の一部です。当時はこれがお布団だったなんて素敵。

→「夜着ー江戸時代の寝具ー」展の詳細はこちら(※現在展覧会は終了いたしております。) 

 

 

——先程から荘加さんのお話に何度も登場している「松坂屋コレクション」とは何でしょうか。 

小袖に魅せられ、博士号の称号も取得し、今では東京国立博物館の研究員から依頼をされ、科学研究費事業にも参加されているとか。 

 

荘加さん:

はい、そうなんです。私にとってとても大切なものです。「松坂屋コレクション」とは、松坂屋が昭和戦前期に呉服の新製品を製作するにあたって、江戸時代の小袖などの「模様」と「色」を参考にするために収集した染織品コレクションのことです。小袖は今の着物の原型で、武士の世になる前の平安時代は、身分の高い人にとっては下着であり、身分の低い人にとっては表着でした。武士の世になり、次第に小袖は表着として身分を問わず着られていくようになったんですよ。小袖の魅力は、江戸時代のものとは思えないほど、とても斬新な模様だと思います。 

2008年から一般公開が開始され、2011年には江戸初期の小袖が(この部分は不要)、2011年に「慶長小袖」、2018年には桃山~江戸初期の能装束4点が国の重要文化財に指定されるという貴重なものなんですよ。 
 

荘加さんが小袖の魅力に気づいたきっかけは、松坂屋京都染織参考館が閉鎖され、松坂屋コレクションとして名古屋に移管されたとき、染織品について研究する機会を得て、研究の世界があることを知ったことだったそうです。それ以来ハマりすぎてしまい、染織に関する博士号を取得し、今では東京国立博物館の研究員から依頼をされ、科学研究費事業にも参加されているとか。 

 

そんな荘加さんが手がける松坂屋コレクション展をきっかけに、綺麗な模様と鮮やかな色の小袖の魅力が、もっと広まっていくといいなと思います。

→松坂屋コレクションの詳細はこちら 

 

 

 

作品に敬意を持って、幅広い業務を担う

 

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——美術館のお仕事で、大変なことはどんなことでしょうか?

 

荘加さん:

作品の扱いです。お借りする際は、最初の立ち振る舞いで信用されなければならず、何度経験しても気を使います。また、いつ作品を触ることになるかわからないため、マネキュアやハンドクリーム、香水などは使用できません。他にも、貴金属や落下する可能性のあるボタンなど、装飾のあるものや汗が作品につかないよう腕が出るものは着ることができなかったりと、いつも服装に気を配らなければなりません。また、髪の毛を染めることもできないため、目立ってきた白髪に困っています。

 

——逆に、お仕事をしていて、嬉しかったことや楽しかったことはありますか?

 

荘加さん:

百貨店の社員でありながら、東京国立博物館の科学研究費事業に研究協力者として参加する機会をいただけたことです。その事業で、アメリカの「メトロポリタン美術館」や「ロードアイランド・スクール・オブ・デザインミュージアム」に調査派遣されました。他にも「松坂屋コレクション」の展覧会を自分で企画できたこと、その後4冊の蔵品図録を製作できたこと、書籍の監修を行うことができたことなども嬉しかったです。

 

大切な作品を傷付けないために、普段から多くのことに気を配られている荘加さん。そんな荘加さんへの信頼があるからこそ、私たちが拝見できる作品がたくさんあるのではないでしょうか。 

 

 

 

何が求められているのかを考える

 

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——“百貨店の美術館”の役割は何だと思われますか?  

 

荘加さん:

百貨店の文化というのは、美術だけでなく衣服、食事、住居などすべてと関係するものです。そういう中での美術館ですので、松坂屋美術館はオールジャンルの展覧会を企画し、さまざまな文化を紹介する場所としての役割が求められていると考えます。また、呉服商から始まった百貨店なので、呉服である着物を紹介して、日本の伝統を含めた染織文化史を紹介することが必要だと考えています。

 

——荘加さんにとって、働く上で大切にされていることはなんですか。

 

荘加さん:

やりたいことができるようになるまでには時間がかかりますが、それを諦めずに、自分の譲れない軸を見つけることが大切です。その中で、自分の立場をわきまえることも大切だと思います。以前、楽の茶碗の展覧会を担当しましたが、監修の先生に、その時の自分にできること(ゴミ拾い)を探し、黙々と取り組む姿勢を褒めていただきました。その後、陶磁の世界に私の良い評判を紹介してくださいました。陶磁と染織で分野は異なりますが、やはり評判は伝わるものなので、どんな状況でも自分の立場をわきまえ、自分のレベルでできることを察知することが大切だと思います。 

 

百貨店の中で求められていることや、自分自身に求められていることなど、常に相手の立場に立って仕事に取り組まれている荘加さんが手がける展示は、きっとお客様に寄り添うようなものになっているのではないでしょうか。 

 

 

 

取材を終えて

 

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荘加さんのお仕事に対する想いを強く感じられた時間でした! 


やりたいことを実現するまでには時間がかかるかもしれませんが、荘加さんのように挑戦し続けることで、自分でも想像していなかった姿になれることを学びました。 
私も、社会人になってからも学び続け、好きな仕事を楽しく続けられる人でいられるよう努力したいと思います。 
荘加さん、貴重なお話をありがとうございました! 

 

 

《今回のゲスト》

 

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松坂屋名古屋店 南館7階 

松坂屋美術館 学芸員
 荘加直子さん(中央) 
趣味は美味しいスイーツを探して食べること。

 
ライター:金城学院大学 あみ

フォト:金城学院大学 りの

 

撮影場所:南館7階史料室 

※史料室の企画展は荘加さんの業務とは関係ございません。何卒ご了承ください。

 

 


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