その十七 夏目漱石が松坂屋で一句!「乙鳥や赤い暖簾の松坂屋」
#松坂屋ヒストリア小話 その十七
夏目漱石は「乙鳥(つばくろ)や赤い暖簾(のれん)の松坂屋」と買物に訪れた松坂屋の赤いのれんを俳句に詠んでいる。
「乙鳥(つばくろ)や赤い暖簾(のれん)の松坂屋」 この句は、夏目漱石が明治29年(1896年)3月24日に、当時教師をしていた愛媛県松山市から東京市下谷区に住む正岡子規へ送った中の一句です。江戸時代から明治時代にかけての商家の暖簾は、紺地に白抜きのものがほとんどでしたが、いとう呉服店(松坂屋)の暖簾には地色が赤(柿)色のものもあり、赤い暖簾は店舗の出入口にもなっていました。わが国のコーポレートカラーのはしりともいえる赤い暖簾は、当時の人々に深い印象を与えていたとおもわれます。文豪・漱石も江戸っ子であり、江戸時代の風情を残す上野の松坂屋に思いを馳せてこの句を読んだのでしょうか。なお、漱石は大正4年(1915年)1月29日の日記にも、松坂屋で買い物をしたことを記しています。
松坂屋の赤い暖簾
夏目漱石